慢性肝炎の認定について(その2)
慢性肝炎として申し立てをしても,厚生労働省がいろいろと追加資料の連絡をしてきて,すんなりと認められないケースが増えてきました。
病態診断のための診断書を肝疾患診療連携拠点病院や肝疾患専門医療機関で作成して「慢性肝炎」に〇印をつけてもらっていても,追加資料や追加意見の追記を求められるケースがあります。
日本肝臓学会の「B型肝炎治療ガイドライン」(第3版)2017年8月によると,2017年2月に新規の核酸アナログ製剤であるテノホビル・アラフェナミド(TAF)が発売されたのを機に,B型肝炎治療ガイドラインが改訂されました。
ガイドラインの基準では,慢性肝炎の治療開始基準が
HBV DNA2000IU/mL(3.3LogIU/mL)以上でかつ ALT31 U/L以上とされているのに対し,B型肝炎給付金請求における基本合意の慢性肝炎の発症の基準は,
「6か月以上間隔をおいた2時点において連続して,ALTの異常値が認められる場合」とされており,齟齬が生じています。
すなわち,「ALT31」 というのは異常値ではなく正常値の上限付近ですので,給付金請求の基準である「半年以上ALTの異常値が続いていること」との間で齟齬があるのです。
臨床医は当然,治療ガイドラインの則って,患者さんにALTの異常値がなくてもALTが31くらいで,ウイルス量が多ければ,「慢性肝炎で治療が必要」といいますし,給付金のための「病態に係る診断書」にも慢性肝炎に〇印を付けてくださいます。
しかし,厚生労働省は,「ALTの異常値が半年以上続いていることが証明されていませんので,追加してください」ということになります。
この問題について,当事務所としては,基本合意策定時の医学的知見が各種医学的検証により変更されていることを粘り強く主張して,取り扱いを変更させたいと思っていますが,和解を前提とする限り,難しい面もあります。
この点について,個別の方の事情として,他の検査結果やこれまでの経緯とあいまって,総合的に慢性肝炎の認定を目指すことも含めて,依頼者の利益のために精一杯頑張りたいと思います。
成功事例が出ましたら,ブログで報告させていただきます。(弁護士 澤田有紀)