このページでは、B型慢性肝炎の現在の治療情報を紹介し、B型肝炎放置の危険性についても解説しています。国は「肝炎対策基本法」に基づい肝炎総合対策を 推進しており、日本肝臓学会はB型肝炎ウイルス感染者の診断・治療目標を明確に示し、標準的な治療方法などを明記した「B型肝炎治療ガイドライン」を 作成しています。
この記事でわかること
こんな人におすすめの記事です
厚生労働省は、2010年に施行された「肝炎対策基本法」に基づき、2010年度以降、①肝炎治療への医療費助成 ②肝炎ウイルス検査の促進 ③診療・研修・相談体制の整備 ④正しい知識の普及 ⑤研究の推進、の5本柱からなる肝炎総合対策を推進しています。
また、一般社団法人日本肝臓学会は、B型肝炎ウイルス感染者の診断・治療目標を明確に示し、標準的な治療方法などを明記した「B型肝炎治療ガイドライン」の第1版を2013年4月に作成し、2021年5月には3.4版を公開しています。
B型慢性肝炎の方が持続感染しているHBV(B型肝炎ウイルス)を、体内から完全に除去する治療法は未だ確立されていません。治療は、薬などでHBVの増殖を継続的に抑制することで肝炎を鎮静化し、肝硬変への進行や肝がんの発生を予防することを目標に行います。
代表的な治療法としては、ウイルスを攻撃する抗ウイルス療法(インターフェロン(IFN)や核酸アナログ製剤)と、肝臓を保護する肝庇護療法などがあります。
HBVに対する抗ウイルス薬は、血中と肝臓の細胞内のウイルスを減少する効果があります。
HBe抗原陽性からHBe抗体陽性への「セロコンバージョン」が起こると、ウイルス量が減少して、肝炎が鎮静化する可能性が高くなります。また、ウイルス量とともに、HBs抗原量が低値になると、肝がんが発生する危険が少なくなります。このためB型慢性肝炎の抗ウイルス療法では、HBe抗原・抗体系の「セロコンバージョン」を起こすとともに、血中のHBV-DNA量とHBs抗原量を低下させて、血清ALT値が正常化することを目指して、インターフェロン製剤の注射と飲み薬である核酸アナログ製剤を用います。
ウイルスに直接作用するとともに、身体にも働きかけてウイルスに対する免疫を高めることで、ウイルス量を減少させます。インターフェロンの効果は、年齢やウイルスの遺伝型(ゲノタイプ)によって差異があります。
ウイルスが肝臓の細胞の中で増えるのを抑える内服薬です。服用することで、血清HBV-DNA量が低下し、AST、ALT値が正常化します。ただし服用には十分な注意が必要です。
抗ウイルス薬が効かない場合や使えない場合には、病気の進行を抑えるために、肝細胞が壊れるのを抑える薬を、内服または注射する、肝庇護療法を行います。体内の鉄の量を減らす瀉血療法も、肝細胞が壊れるのを抑えるのに有効です。これらの療法で、血中のAST、ALT値が低下すると、肝硬変に進行するスピードが抑えられ、肝がんの発生を先延ばしすることも可能です。
B型肝炎が慢性化すると、肝硬変や肝がんに進行する可能性があります。「肝臓は沈黙の臓器」と呼ばれるほど、自覚症状がないまま静かに病状が進行しますので、必ず一度は専門医を受診してください。
厚生労働省は、地域における肝疾患医療の中心的な役割を果たす病院として、各都道府県に原則1カ所の肝疾患診療連携拠点病院を指定し、この拠点病院を中心に専門医療機関及びかかりつけ医との連携による地域の肝疾患診療ネットワークの整備を進めています。
肝炎の専門医療を受けたい場合は、まず、かかりつけ医に相談し、上記のような専門の医療機関を紹介してもらうことをお勧めします。肝疾患診療連携拠点病院には肝疾患相談支援センターが設置されており、肝炎に関する質問や相談を受け付けています。