最高裁判決:B型肝炎訴訟の除斥期間の起算は慢性肝炎の再発時
昨日の最高裁判決について、再発の方の救済につながるものであり、提訴後13年もの年月を経て、判決を勝ち取られた原告および原告代理人の努力及びご苦労に心より敬意を表します。(2021.4.27)
B型肝炎給付金請求においては、20年以上前に、慢性肝炎を発症し、現に治療中の者は300万円としているところ、今後は1250万円の請求がみとめられるものと考えます。
このブログの目次
原告(お二人)の経過ですが、若いころに肝炎を発症し、セロコンバージョンにより肝炎が沈静化したのち、再度慢性肝炎を発症したという事例です。
◆HBV持続感染者は、その多くが無症候性キャリアから活動性肝炎となり、セロコンバージョン(HBe抗原が陰性化し、HBe抗体が陽性となる)が起こった後に、肝炎が鎮静化し、非活動性キャリアとなるところ、この場合、肝細胞がん等への進行リスクは低く、長期予後は良好である。
その一方で、HBV持続感染者は、HBe抗原陽性又は陰性の慢性B型肝炎を経て、セロコンバージョンが達成されても、肝硬変へと進行する可能性があり、肝硬変まで進行した場合、年率5~8%で肝細胞がんを発症する。
今回の裁判では、HBe抗原陽性の慢性肝炎を発症した後、セロコンバージョンを起こし低増殖期を経たが、寛解期に移行せず、ふたたびALTが異常値となり、HBe抗原陰性の慢性肝炎を発症したとのこと。
▶️ 高裁の判決
「慢性B型肝炎が、セロコンバージョンをもたらすHBVの遺伝子変異の前後を問わず、HBVへの免疫反応であることに変わりはなく、上告人らのHBe抗原陰性慢性肝炎は、HBe抗原陽性慢性肝炎が長期の経過をたどった結果、肝硬変や肝細胞がんへの進行リスクのある年齢で慢性肝炎が再燃したものにすぎない。
したがって、HBe抗原陰性慢性肝炎の病状と、HBe抗原陽性慢性肝炎の病状とは、質的に異なるものではなく、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症によって新たな損害が発生したとはいえない。」と判断しました。
▶️ 最高裁の判決
「セロコンバージョンにより非活動性キャリアとなった後に発症するHBe抗原陰性慢性肝炎は、慢性B型肝炎の病態の中でもより進行した特異なものというべきであり、・・・・
上告人らがHBe抗原陽性慢性肝炎を発症したことによる損害と、HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害とは、質的に異なるものであって、HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害は、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時に発生したものというべきである」と判示し、除斥期間の起算点をHBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時と判断しました。
すでに20年以上前に、慢性肝炎を発症し、現に治療中の者は300万円として和解してしまった方について、今回の判例を根拠に追加請求が可能かどうか、対応を検討したいと思います。(弁護士 澤田有紀)
▶️ 追記 2022年(9月29日)
セロコンバージョン後に慢性肝炎が再発した方について、再発時を起算点となりました。
ご本人は20年以上前に慢性肝炎を発症して入院、インターフェロン治療を受けておられたので、除斥期間経過となれば300万円での和解となるところでしたら、最初の発症がセロコンバージョン前であることが立証できたため、1250万円での和解が認められました。ご本人にもとても喜んでいただけよかったです。(弁護士澤田有紀)
▶️ 追記 2023年(3月7日)
上記、追記事案については再発としての和解ではないらしいです。
20年以上前に慢性肝炎を発症した事例では、上記最高裁判例を前提とした再発にあてはまる場合でも、再発時を起算点とした和解は、まだ福岡高裁で弁護団と協議中で、本日時点でも和解には応じていないとのこと。当事務所でも再提訴した方、和解を保留中の方も含め、保留案件多数となっています。
国の結論をじっと待っていても仕方がないので、当事務所では最高裁判例の射程と思われる件については、再提訴をお受けしています。
1日も早い被害者救済のために、国は決断をお願いします。(弁護士澤田有紀)
【B型肝炎訴訟についてのお問い合わせ・LINE相談 受付中】
LINEでのご相談は年中無休で担当弁護士が対応!!
➿0120-7867-30(なやむな みお)
【電話受付時間】9:00〜20:00