慢性肝炎での和解事例(国の基準に当てはまらないが立証に成功)
慢性肝炎の病態の認定についての,具体的な基準は,「6か月以上間隔をおいた2時点において連続してALTの異常値が認められる場合」とされています(厚労省の手引き12頁)。
「異常値」とは検査方法によって異なりますが,当該検査方法の基準値を超える数値とされています。
「6か月以上間隔をおいた2時点」において「連続して」となっているので,途中に正常値が含まれている場合は,これに該当しません。
また「6か月以上間隔をおいた2時点」というのも何年も間隔があいている場合にはどうなるのかという問題もあります。
今回和解できた例は,「10年前に経過観察として通院していた時に4か月ほど異常値が続いた後,家庭の事情で通院ができなくなり,通院を中断し,その後10年たって,医療機関で検査してもらったところ異常値と正常値を行ったり来たりしているが6か月間は異常値が続いていない」という事例です。
この例で問題となるのは,「連続して,異常値が確認できたのは4か月間だけ」ということでした。また数値が上昇した時点で何も具体的な治療は受けておられなかったというのも問題でした。
はたして,これで慢性肝炎と認めてくれるのか,提訴した時点では不安でしたが,主治医の意見書を補充したり,現在の肝臓の画像の診断結果などをもとに,粘り強く交渉した結果,なんとか和解ができました。
今回の事例は主治医が肝疾患専門医療機関の医師で協力的であったことのほか,いろいろと認定に有利な要素があったので,たまたま認められたのかも知れませんが,形式的な基準を個別具体的な事情のあてはめて「無理」と即断せずに,きちんと主張立証すればなんとかなるという事例を積み重ねております。
無症候性キャリアであれば50万円の一時金ですが,慢性肝炎発症であれば1250万円(発症後20年以内の場合)なので,依頼者にとってみれば大きな差です。
依頼者の方にも大変喜んでいただけました。(弁護士 澤田有紀)