B型肝炎ウイルスの父子感染について
父子感染だと思い,最初から手続きをあきらめている方もいらっしゃいますが,ちょっと待ってください!
まず,父子感染だと思う理由について,
・単に,亡くなった父親が肝がん(または肝臓病)を患っていたから,きっとB型だったんだろうと思っているだけという方
→父子感染だと断定できないので,手続き可能です。
・そうでなく,亡くなった父親がB型肝炎ウイルスに感染していたと検査で分かっているという方
→父子感染だと断定できないので,手続き可能です。
・父親が,存命でかつB型慢性肝炎などを発症したことがあるという方
→お二人のB型肝炎ウイルスの塩基配列を比較する血液検査(HBV分子系統解析検査)を実施してみなければ,父子感染かどうかわかりません
→父親またはご本人のHBVウイルスが減少して塩基配列検査で判定不能であれば手続き可能です。
ということで,集団予防接種で感染したのではなく,父子感染で感染したのだということの積極的な証明(HBV分子系統解析検査で一致)がない限り,父子感染で証明したということで排除されることはありません。
従いまして,父親が死亡している場合は,父親がB型肝炎ウイルスのキャリアであったとしても,父親と本人の塩基配列を比較する検査が実施できない結果,父子感染であることの証明ができないので救済対象となります。
また,父親が存命で,HBV分子系統解析検査の結果,父子感染であることが証明された場合でも,父親が一次感染者(昭和16年7月2日以降の生まれで一次感染者の各要件を満たす場合)は,二次感染として父親も本人も両方,給付金の対象となります。
これまでに,当事務所で取り扱った中で,父子感染であることが確定したけれども,父親が一次感染であることが証明できて,こどもも二次感染者として救済できた例があります。
いずれにしても,父子感染で請求が認められないというのはかなり例外的な場合になりますので,「父子感染だから無理」だと思いこまず,まずは,ご相談いただければと思います。(弁護士 澤田有紀)
※HBV分子系統解析検査は,特殊な検査ですので,医療機関によっては対応してくれない場合があります。当事務所で,西日本の肝疾患専門医療機関に対応可能かどうかのアンケートを実施しています。
詳しくは,こちらのページをご参照ください。
※HBV分子系統解析検査にはお一人あたり3万円余り,おふたりで6万円余りの検査費用が実費でかかりますが,お二人の塩基配列が一致しているという結果以外の場合(すなわち「感染の因果関係なし」「判定不能」の場合),には給付金請求が認められた場合,検査費用が支給されます。