医療記録(カルテ)の保存義務と開示について
B型肝炎給付金請求においては、請求者本人の医療記録のほか、母子感染でないことを証明するために亡くなった母親・兄・姉などの医療記録から検査結果の開示を求める場面があります。
病院にカルテの開示請求ってできるんですか?というのが素朴な疑問・不安だと思いますが、法律上の根拠や、厚生労働省の行政指導についてご説明します。
▶️ 診療録は最低、何年間保存しなければいけないのか?
医師法では、「診療録」は5年間保存しなければならないとされています(同法24条2項)。
一連の診療が終わってから5年間と解されています。5年間を経過したからといって、すぐに廃棄するかどうかは医療機関の判断ですので、長期間保管されている例もあります。
私の感覚としては訴訟リスクに備えて10年くらいは保管しているのが普通ではないかと思います。
▶️ 開示を求める根拠は?
診療録に記載されている医療情報は、いわゆる個人情報保護法の「個人情報」(同法2条1項)、「個人データ」(同4項)に該当します。
個人情報保護法によると、一部の例外を除き、「本人から個人データの開示を求められたときは、本人に対して、法令に定める方法により、遅滞なく、当該保有個人データを開示しなければならない」と規定しています。
また厚生労働省は、平成15年に、「診療情報の提供等に関する指針」において、
- 医療従事者等は患者等が患者の診療記録の開示を求めた場合には原則としてこれに応じなければならない。
- 診療記録の開示の際、患者等が補足的な説明を求めた時は、医療従事者等は、できる限り速やかにこれに応じなければならない。この場合にあっては、担当の医師等が説明を行うことが望ましい
と通知しています。
また、同指針においては、患者本人だけでなく、「死者の情報」も開示の対象とされています。
遺族から亡くなった患者の診療録の開示を求められた時も同様に開示しなければならないのです。
公立の病院であれば、条例により、情報開示の一環として、診療情報の開示について規定がある場合もあります。
▶️ 病院による対応の違い
当法人の支店がある京都は、病院やクリニックの数がダントツに多く、また肝疾患専門医療機関とされている医療機関も多数あるのですが、病院によって、対応がこんなにも違うのかといつも実感しています。
たとえば、京都府立医大病院は、府立ですので、手続きは公的なルーティンとして定められて、開示請求においてストレスはないのですが、開示に時間がかかります。
というのは、間違いがあってはならない行政手続きとしての開示ですので、定例の委員会で開示するかどうかを決定し、開示してよい情報と開示しない情報をきっちりと峻別し、開示しない情報には、手作業でひとつひとつ黒塗りのマスキングをして開示していただきます。
・・・開示しない情報というのは、たとえば、検査結果票に押してある検査技師の印鑑の印影です・・・
もっと、いろんな病院やクリニックの開示の物語をかきたいのですが、ご協力をいただいている手前、自重しておきます。(弁護士 澤田有紀)
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