母が一次感染、子が二次感染|家族で進めるB型肝炎給付金請求
<このコラムでお伝えしたいこと>
母親がB型肝炎の一次感染者、お子さまが母子感染による二次感染者という家族単位のご相談が増えています。このコラムでは、二次感染者として給付金を受け取るための要件、母親の状況によって手続きがどう変わるか、家族でまとめてご相談いただく際に知っておきたい点を解説します。
1 はしがき-増えている「家族みんなで気づいている」ご相談
特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法(以下「B型肝炎特措法」といいます。)に基づく給付金の請求期限は、令和9年(2027年)3月31日です。この期限がさらに延長されるかどうかは、現時点では分かりません。
弊所には最近、母親がB型肝炎の一次感染者、お子さまが母子感染による二次感染者というご家族から、お問い合わせをいただくことが増えています。なかでも多いのは、感染していることをご家族全員がすでに把握していらっしゃるという例です。
「母子感染だから対象外」と思い込んでいらっしゃったものの、実は二次感染者として給付金を受け取れる場合があると知り、あらためてご相談にいらっしゃる方も少なくありません。このコラムでは、二次感染者として給付金を受け取るための要件や、母親の状況によって手続きがどう変わるか、家族でまとめてご相談いただく際に知っておきたい点をご紹介します。
2 二次感染者として認められるための要件
(1) 二次感染とは何ですか?
二次感染とは、B型肝炎ウイルスに持続感染している親(一次感染者)から、出産などを通じてお子さまに感染することをいいます。母親からの感染を母子感染、父親からの感染を父子感染と呼びます。
厚生労働省の「B型肝炎訴訟の手引き」によれば、一次感染者である母親からの母子感染によって持続感染者となった方は、二次感染者として救済対象になるとされています。「母子感染だから給付金の対象外」という理解は、集団予防接種等が原因で感染した一次感染者の要件としては正しいのですが、二次感染者としての救済制度が別に用意されているという点が見落とされがちです。
(2) 二次感染者が給付金を受け取るための要件とは?
同手引きによれば、二次感染者として認められるためには、次の要件をすべて満たす必要があるとされています。
第1に、母親が一次感染者としての要件をすべて満たしていることです。第2に、お子さま自身がB型肝炎ウイルスに持続感染していることです。第3に、その感染原因が母子感染(または父子感染)であると認められることです。
母親がすでに一次感染者として国と和解していらっしゃる場合は、第1の要件がすでに立証されていることになるため、お子さまの請求を進めやすくなります。他方、母親がまだ請求していらっしゃらない場合は、母親についても一次感染者の要件を満たしているかどうかから確認する必要があります。
(3) 母子感染をどうやって証明するのですか?
母子感染の証明には、母親とお子さまのB型肝炎ウイルスの塩基配列(ウイルスの遺伝情報の並び方)を比較する「HBV分子系統解析検査」を用いることが一般的です。厚生労働省も、この検査に関する取扱いについて医療機関向けの通知を発出しています。
この検査は、母親とお子さまが同じ時期に医療機関を受診して採血する必要があります。もっとも、いずれかのウイルス量が少ないなどの理由で、判定ができない結果になることもあります。その場合は、出生直後の血液検査の記録など、ほかの資料で証明できないかをあわせて検討することになります。
3 お母様の状況によって、手続きはどう変わりますか?
(1) 母が一次感染者としてすでに和解している場合、どうなりますか?
母親がすでに一次感染者として国と和解し、給付金を受け取っていらっしゃる場合は、その和解の記録を活用できるため、お子さまの二次感染者としての請求を進めやすくなります。
実際のご相談でも、他の法律事務所で母親の請求を担当された後、お子さまの請求についてはあらためてご相談にいらっしゃる例があります。費用の説明や対応の仕方など、それぞれのご事情に応じて依頼先を選ばれているようです。
(2) 母がまだ請求していない場合は、どう進めればよいですか?
母親ご自身が一次感染者としての請求をまだしていらっしゃらない場合は、母親とお子さまの請求をあわせて進めるご相談が増えています。この場合、まず確認する必要があるのは、母親が一次感染者としての要件をすべて満たしているかどうかです。
特に、母親が昭和20年(1945年)前後生まれの場合、母親ご自身が母子感染ではないことを証明できるかが大きな壁になりがちです。母親のそのまた母親(お子さまから見た祖母)がすでに亡くなっていらっしゃることが多く、祖母の血液検査結果を見つけることが難しいためです。
もっとも、こうした資料が見当たらない場合でも、ご家族の年代や状況によっては、別の形で立証できる余地が残っていることがあります。資料が見当たらないというだけであきらめず、個別の事情を弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
なお、お母様がすでに亡くなっていらっしゃる場合は、ご家族が相続人としてお母様の一次感染者としての請求を進める手続きと、お子さまご自身が二次感染者として請求する手続きは、別のものとして進める必要があります。どちらか一方だけを行えば足りるわけではありませんので、ご注意ください。
4 給付金の金額は、病態や経過年数でどう変わりますか?
(1) 病態によって給付金額はどう変わりますか?
B型肝炎給付金の金額は、病態の種類と、発症等から一定の期間(除斥期間・消滅時効期間)が経過しているかどうかによって、次の表のとおり変わります。
病態 発症・死亡等から20年以内 20年経過後の目安
死亡・肝がん・肝硬変(重度) 3,600万円 900万円
肝硬変(軽度) 2,500万円 300万円〜600万円
慢性肝炎 1,250万円 150万円〜300万円
無症候性キャリア 600万円(該当は限定的) 50万円
20年経過後の慢性肝炎・肝硬変(軽度)の金額は、現在の症状や特異的治療歴の有無によってさらに区分が分かれます。ご相談者様の病態や経過によって金額が変わりますので、正確な見込み額は個別にご確認いただくことをお勧めします。
(2) 除斥期間・消滅時効期間の起算点はいつですか?
20年の起算点は、病態によって異なります。無症候性キャリアの方はB型肝炎ウイルスに感染する原因があった日、慢性肝炎などを発症した方は症状が発症した日、亡くなった方は死亡日が起算点です。
ご相談にいらっしゃったご家族の中には、お子さまが無症候性キャリアのまま長く経過観察を続けていらっしゃる例もあります。この場合、20年の起算点は感染の原因があった日(多くは出生の頃)になりますので、早めに手続きを進めておくことが望ましいです。
5 手続きの流れと必要書類
(1) 手続きはどのように進みますか?
手続きは、おおむね次の流れで進みます。第1に、母親とお子さまそれぞれについて、一次感染者・二次感染者の要件を満たすかを確認します。第2に、母子健康手帳や出生直後の血液検査記録、HBV分子系統解析検査の結果など、必要な資料を集めます。第3に、国を被告として訴訟を提起し、和解が成立すれば、社会保険診療報酬支払基金に給付金を請求します。
(2) 必要書類は、母の状況によってどう変わりますか?
必要書類は、母親が存命かどうかで変わります。母親が存命の場合は、母親ご本人の血液検査結果や、母子でのHBV分子系統解析検査の結果が中心になります。母親がすでに亡くなっていらっしゃる場合は、母子健康手帳や生前のカルテなど、当時の医療記録が重要な資料になります。医療記録が十分に見当たらない場合でも、代わりとなる資料で証明できないかをあわせて検討することになりますので、まずは手元にある資料を弁護士にご確認いただくことをお勧めします。
6 家族単位でご相談いただく際に知っておきたいこと
(1) 家族で相談すると、どのように手続きが進みますか?
家族単位でご相談いただく場合、代表となる方を窓口にしてご連絡することが多いです。もっとも、ごきょうだいの間でも症状や受け取る金額を知られたくないというご事情がある方もいらっしゃいます。その場合は、窓口を通さず個別にご連絡する形をとりますので、ほかのごきょうだいに情報が伝わることはありません。また、ごきょうだいの全員が同じ時期に手続きを始めなければならないわけではなく、一部の方から先に進めていただくことも可能です。
(2) 昭和60年代生まれでも、二次感染は起こりますか?
平成に入る前後から、出生直後のワクチン接種など母子感染を防ぐ対策が広く行われるようになりました。もっとも、生後すぐにワクチンを接種していても感染してしまった例や、超低体重児で生まれたためワクチンの接種時期が遅れた例など、個別の事情によって二次感染が生じることがあります。年代だけで対象外と判断せず、まずは検査を受けていただくことをお勧めします。
(3) 無症候性キャリアの方への経過観察の支援はありますか?
無症候性キャリアとして和解が成立すると、受給者証が発行されます。この受給者証があれば、年4回まで無料で経過観察のための定期検査を受けることができ、年2回までは通院1回につき1万5,000円の定期検査手当を受け取ることができます。今後、症状が悪化した場合には、その時点で追加の給付金を請求できる仕組みになっています。今は症状がなくても、将来に備えた検査体制が用意されている点は、あらかじめ知っておいていただきたいポイントです。
7 弁護士法人みおのサポート
母子感染による二次感染は、母親とお子さまの双方の要件を確認する必要があり、資料集めも一次感染者の場合以上に手間がかかることがあります。弁護士法人みおの弁護士が、母親・お子さまそれぞれの状況を丁寧に確認し、必要な資料の集め方から訴訟の対応まで、一貫してサポートいたします。
資料が見当たらない場合でも、あきらめる前にご相談いただくことをお勧めします。弁護士法人みおでは、B型肝炎給付金請求を数多く取り扱ってきた経験を踏まえ、専任の担当者がご家族お一人おひとりのご事情に応じたきめ細かい対応を心がけております。
請求期限である令和9年(2027年)3月31日までに手続きを終えるには、資料収集の時間も見込んで、早めにご相談いただくことが大切です。ご家族での相談にも対応しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
<Q&Aまとめ>
Q1.母子感染でも、B型肝炎給付金を受け取れますか?
A1.受け取れる場合があります。母親が一次感染者としての要件を満たしていれば、母子感染したお子さまは二次感染者として給付金の対象になります。
Q2.二次感染者として認められるための要件は何ですか?
A2.母親が一次感染者の要件を満たしていること、お子さま自身がB型肝炎ウイルスに持続感染していること、感染原因が母子感染(または父子感染)であることの3つです。
Q3.母子感染はどうやって証明するのですか?
A3.母親とお子さまのウイルスの塩基配列を比較する「HBV分子系統解析検査」を用いることが一般的です。この検査で判定できない場合は、出生直後の血液検査記録などほかの資料もあわせて検討し、母子感染以外の感染原因が見当たらないことを証明します。
Q4.母親がすでに亡くなっている場合、どのような手続きが必要ですか?
A4.ご家族が相続人として母親の一次感染者としての請求を進める手続きと、お子さまご自身が二次感染者として請求する手続きの、両方が必要です。
Q5.B型肝炎給付金はいくらもらえますか?
A5.病態や経過年数によって、50万円から3,600万円まで幅があります。無症候性キャリアの方でも、将来症状が悪化した場合には追加で請求できます。
Q6.請求期限はいつまでですか?
A6.令和9年(2027年)3月31日までです。この期限が延長されるかどうかは、現時点では分かりません。
Q7.昭和60年代生まれでも二次感染していることはありますか?
A7.あります。ワクチン接種のタイミングが遅れた場合や、低体重児で出生した場合など、個別の事情によって二次感染が生じることがあります。
(文責 弁護士澤田有紀)
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弁護士法人みお綜合法律事務所 代表社員弁護士/大阪弁護士会所属。2012年のB型肝炎給付金制度の開始当初から請求サポートに注力し、相談・提訴実績多数。全国・海外在住の方にも対応。




















































